経営者が人材育成でつまずく“本質”について




最近あらためて感じていることがあります。
それは、ある本で読んだ 「本郷猛を鍛えてはいけない」 という言葉が、
実は“経営者自身への戒め”であると同時に、
“人材育成の本質”でもあるということです。
この言葉を、ずっと自分の成長論として捉えていました。
しかし今は、スタッフ育成を考えるうえでの核心だと強く思うようになりました。
◎ 「本郷猛」と「仮面ライダー」はまったく別物である




本郷猛は、ショッカーに拉致され、
自分の意思とは関係なく改造人間にされました。
どれだけバイクの技術を磨き、空手を学び、体力を鍛えても、
本郷猛は本郷猛のままです。
鍛えれば強くはなる。
しかし “怪人と戦える存在” には決してならない。
仮面ライダーとは、
スキルや努力の延長線上にある存在ではありません。
“変身することで成り立つ、まったく別の人格” です。
◎ 経営者である私は、望んで“仮面ライダー”になったわけではない



私もそうでした。
師匠にあたる社長が突然の事故で亡くなり、
望んだわけではないのに経営者になった。
覚悟を問われ、役割を背負い、
自分の意思とは関係なく“社長モード”に切り替わらざるを得なかった。
だから私は自然と、
本郷猛の戸惑いや孤独と重なる部分が多い。
しかし、役割に向き合ったとき、
私は「経営者モード」という別人格に“変身”していた。
◎ スタッフに対しても同じ構造が起きている

ここからが今日の本題です。
経営者が人材育成でよくやってしまうのが、
「本郷猛を鍛えて、仮面ライダーをつくろうとする」
という間違いです。
・仕事の技術
・タスク処理能力
・マナーや仕事術
これらは鍛えれば鍛えるほど身に付きます。
しかしそれは、
本郷猛がバイクや空手を鍛えているのと同じで、
いくら努力しても “役割を背負える人材” にはならない。
経営が求めるのは
「戦える人材」
であって、
「スキルが増えただけの人」ではありません。
◎ 組織が本当に必要としているのは“変身できる人材”



スキルアップではなく、
役割と視点の変化=変身 が必要なのです。
・自分の仕事だけを見るか
・組織全体を見られるか
・責任を受け取れるか
・人のせいにしないか
・使命で動けるか
これらはスキルではなく、
人格のシフト です。
本郷猛をどれだけ鍛えても、
仮面ライダーにはなりません。
スタッフ育成でも、
“本人の内側の構造”が変わらなければ、
役割は変わらない。
◎ 経営者は「本郷猛を鍛える教育」をやめなければならない


私たちはよく、
「もっとできるようになるための指導」
に時間を使います。
しかし本当に必要なのは、
“変身してもらうための環境づくり” です。
・役割を渡す
・判断させる
・責任を持たせる
・逃げ場をつくらない
・チームの中で必要とされる構造に入れる
スキルではなく、構造を変える。
ここで初めて、人は仮面ライダーになれる。
◎ おわりに:経営者の役割とは何か

「本郷猛を鍛えてはいけない」という言葉を、
私は長い間、自分へのメッセージとして受け取っていました。
しかし今は、
経営者がスタッフに対して抱くべき“教育の哲学”
なのだと思っています。
スキルを積ませるだけでは、人は変わらない。
覚悟と役割を背負わせたとき、初めて人は変身する。
経営とは、
“変身して戦える人材” をつくる仕事です。
これが、私がいま辿り着いている BOSS思考の人材育成論 です。
